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京都国立博物館 メールマガジン 第1号 2007年6月6日
配信日時:2022/02/14 16:45
京都国立博物館 メールマガジン 第1号[KNM:00001] 

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[ご挨拶]

このたび京都国立博物館では、メールマガジンを発刊することになりま
した。
 当館の情報につきましては、ホームページでもご覧頂けることになっ
ておりますが、展覧会開催日程や各種イベント、コンサートのご案内は
もちろんのこと、よりホットで新鮮な情報を、より迅速にお届けできる
ようにするためのものです。
 京都国立博物館はこれからもみなさまに愛され親しまれる博物館を目
指して努力を致す所存でございますので、是非メールマガジンをご利用
いただくと同時に、気軽にまた積極的に当館に足をお運びいただき、み
なさまの博物館として育てていただければ幸甚に存じます。
 今後も、くれぐれもご支援の程、よろしくお願い申し上げます。

京都国立博物館館長
佐々木丞平

[特集陳列] 新収品展
6月20日(水)縲怩V月29日(日)
平常展示館13・17室

当館では館蔵品の充実を目指し、毎年さまざまな分野の作品を収集し
ています。本展では、昨年度に購入した作品、寄贈をうけた作品を紹
介します。
京都国立博物館の館蔵品で手鑑といえば、高野切や本阿弥切など、
著名な古筆切が数多く貼りこまれた「藻塩草」(国宝)がよく知られて
います。このたび当館で購入した「古文書手鑑(八十八通)」はその弟
分となるものですが、古文書ばかりで構成されている点で大きく異なり
ます。
 この手鑑で重要なのは、大きな台紙に貼りこんでいるため、表裏あわ
せた八十八通のうち、三通をのぞくとすべて首尾完存していることです。
このため、内容はもちろんのこと、もともとの形や風合いが損なわれる
ことなく伝えられており、色々な情報を読みとることが可能となるわけ
です。
 中身に目をむけると、じつにいろいろなタイプの文書が含まれている
ことも見逃せません。すべてについてふれることはできませんが、鎌倉
時代のおわりに二条為世と京極為兼とが勅撰和歌集の撰者となることを
めぐっておこした裁判、いわゆる延慶両卿訴陳に関する文書は白眉とい
えるでしょう。

主な展示作品
【絵画】
・十一尊天得如来像 
・物語絵断簡 
・蟹図 伊藤若冲筆 
・れい毛雑画冊(全十図)斉白石筆 
【書跡】
・古文書手鑑(八十八通) 
画像は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/img/sin2007/s2007-1.jpg
画像は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/img/sin2007/s2007-3.jpg
携帯用画像は→http://www.kyohaku.go.jp/i/img/s2007-2.jpg
【彫刻】
・木心乾漆造仏手 
・木造蓮弁 
・木造台座反花 
【金工】
・重要文化財 太刀 銘粟田口一竿子忠綱彫同作 宝永六年八月吉 
・重要美術品 金銅五鈷鈴 
・金銅火舎 
【陶磁】
・絵志野秋草文徳利 
・青織部筒向付 
【漆工】
・枝垂桜祇園守紋蒔絵見台 
画像は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/img/sin2007/s2007-2.jpg
携帯用画像は→http://www.kyohaku.go.jp/i/img/s2007-1.jpg
【染織】
・染分麻地菊蔦雲段文様染被衣 
・白綸子地御簾松文様染繍小袖 
・神宮文様描絵振袖 
・市松人形 
・長刀鉾雛形 
【考古】
・重要美術品 四区袈裟襷文銅鐸 鳥取県東伯郡琴浦町八橋出土 
・古瓦類 
・新羅印花文骨壺 
【歴史】
・風竹図 木戸孝允筆 

展覧会詳細は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/sin2007/sin2007.html
携帯版は→http://www.kyohaku.go.jp/i/ctokutin-sin3.html


[土曜講座]
毎週土曜日の午後1時30分から、当館講堂において、当館研究員が展
覧会や展示品に関連した講座を行っています。
参加費は無料。定員は176名です。
テーマによっては外部講師をお招きしています。
なお、特別展覧会開催中および特別展覧会開催中以外の毎月第2・4土
曜日開催の講座に関しては、講座当日の午後12時45分から渡り廊下に
て入場整理券を発行します。整理券がなくなり次第、受付を終了いたし
ますので、あしからずご了承願います。
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平成19年6月9日
テーマ/こうして人は仏を作った―仏教美術の心―
講師/文化財管理監 中村康
*整理券発行
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平成19年6月16日
テーマ/羅什三蔵絵伝をめぐって
講師/列品管理室長 若杉準治
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平成19年6月23日
テーマ/明代宮廷絵画と浙派(せっぱ)
講師/上席研究員 西上実
*整理券発行
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平成19年6月30日
テーマ/古文書の貼られた手鑑
講師/研究員 羽田聡
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講座詳細は→http://www.kyohaku.go.jp/jp/kouza/kouza.html
携帯版は→http://www.kyohaku.go.jp/i/doyou.html

[夏期講座]
京都国立博物館では、毎年夏に3日間連続で、各分野の研究者が一つの
共通のテーマに沿って、最新の研究成果を盛り込んだ発表を行う集中講
座(夏期講座)を開催しております。 
今年は、「文化の波及と変容」をテーマに、絵画・書跡・工芸品などとの
関わりの中から考えてみます。ご興味のある方は、ぜひご参加ください
ますようご案内申し上げます。
総テーマ/「文化の波及と変容」 
会期/平成19年8月1日(水)縲・日(金) 
会場/京都国立博物館 講堂
募集人員/176名 
参加費/2,000円 
申込期間/平成19年6月1日縲・0日(期間内必着)。
申込方法/上記の申込期間中に、往復はがきに住所・氏名・年齢・職業・
電話番号を明記の上、下記へお申し込みください(期間内必着)。
※なお、定員を越えた場合、抽選とさせていただきます。

申込先/〒605-0931
京都市東山区茶屋町527 京都国立博物館「夏期講座係」
※e-mailでのお申込も受け付けます。
必要事項記入の上、summer-lec@kyohaku.go.jpまで 


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平成19年8月1日 第1講(10時縲・1時30分)
テーマ/門の文化竏猪@隆寺金堂から東大寺南大門へ竏箪r講師/文化財管理監 中村康
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平成19年8月1日 第2講(13時縲・4時30分)
テーマ/東アジアにおける陶質土器の系譜
講師/考古室長 宮川禎一
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平成19年8月1日 第3講(14時45分縲・6時15分)
テーマ/聖母像の変容と波及
講師/神戸大学大学院人文学研究科准教授 宮下規久朗氏
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平成19年8月2日 第1講(10時縲・1時30分)
テーマ/閑院宮邸跡の変遷
講師/京都産業大学文化学部教授 鈴木久男氏
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平成19年8月2日 見 学(13時30分縲・5時30分)
閑院宮邸跡庭園ほか
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平成19年8月3日 第1講(10時縲・1時30分)
テーマ/名物裂の素性
講師/研究員 山川曉
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平成19年8月3日 第2講(13時縲・4時30分)
テーマ/天台常行堂阿弥陀五尊の原型と変容
竏忠~仁が見た憧れの中国浄土信仰の謎竏箪r講師/研究員 大原嘉豊
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平成19年8月3日 第3講(14時45分縲・6時15分)
テーマ/室町水墨画を中世東国から見る
講師/成城大学文芸学部 芸術学科教授 相澤正彦氏
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講座詳細は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/kouza/kaki_kuoza/index.html


[京都らくご博物館]
京都国立博物館では、多くの皆様に親しまれる博物館づくりの一環とし
て、我が国の伝統芸能である落語を「京都・らくご博物館」と題して春
夏秋冬の年4回、開催時の季節に応じた演目で上演しています。
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平成19年8月17日(金) 18:00開場 18:30開演
テーマ/京都らくご博物館[夏]納涼寄席vol,14 
出演者/桂雀喜 桂つく枝 桂小米朝 桂米平 桂雀三郎 
演目/当日のお楽しみ!
入場料/立見席1,500円
今回は、「納涼寄席」と題し、宵闇せまる夏の博物館で、暑さも忘れるほ
どおもしろい落語をお楽しみください。
●チケットのお求め方法
1. ご来館の方への窓口販売 
販売場所:京都国立博物館 南門観覧券売場(七条通側)
2. 電話:075-531-7504(京都国立博物館 渉外課事業推進係)
 (受付時間は月曜日から金曜日の9:00縲・7:30。祝日は除く)
3.WEBからの申込み
申込は→https://www7.kyohaku.go.jp/KNM/servlet/Main
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[博物館Dictionary] No.148 
あなたに語る・時代を超えて生きる心
近衛家熈臨書資料

書にはその人の性格や雰囲気が表れる、ということを表現するとき、
よく「書は人なり」と言います。確かに、見ただけで「これはあの人の
字だ」と分かることがあるように、人が手ずから書いたものには、良く
も悪くも個性が反映されます。つまり、書というのは、自分の気持ちや
用件を伝えるための単なる記号ではなく、絵画と同じように視覚的な要
素も含んでいるといえそうです。
さて、その昔、天皇やお公家さん、えらいお坊さんたちにとって、き
ちんとした字が書けるというのは、教養の一つとみなされていました。
たとえば、お公家さんの世界では、いい歌が詠める、楽器がうまく演奏
できるのと同じくらい重要なこととされていました。つまり、彼らにと
って「書く」という行為は、人を計る物差しの一つであり、わたしたち
が考える以上に大切なことだったのです。そのために、お師匠さんにつ
いて習ったり、自分で研鑽をつんだりと、それこそ血のにじむような努
力をしました。テレビなどでみていると、優雅な世界を想像してしまい
がちですが、じつは以外と大変だったんですね。
結果、なかには芸術的な字を書くとして、後世に名を残す人があらわ
れます。「三筆」と称された空海(弘法大師、774縲・35)・嵯峨天皇・橘
逸勢、「三跡」と称された小野道風・藤原佐理・藤原行成(972縲・027)
はその代表例といえるでしょう。また、こうした人たちの書を学んで、
藤原忠通(1097縲・164)や伏見天皇(1265縲・317)のように独自の境地
を開拓する人も多くあらわれ、近衛家熈というお公家さんもその一人に
あげることができます。
家熈は寛文7年(1667)に近衛基熈の子として生まれました。近衛家
は、さきの藤原忠通の子が「近衛」と称したことにはじまり、将来、関
白や摂政といった最高の位につくことを約束された歴史と格式のある
家です。家熈もその例に漏れず、延宝元年(1673)に元服してからは昇
進を重ね、41才で関白、43才で摂政となりました。59才で出家して「予
楽院」と号し、元文元年(1736)に70才で亡くなります。彼は江戸幕
府との交渉といった政治方面での活躍もさることながら、いろいろな芸
能に精通していて、とくに書は予楽院流という独自の書風を確立し、能
書としての名声をほしいままにしました。
では、家熈がここまで傑出した要因は何だったのでしょうか?もちろ
ん、お父さんの基熈や後西天皇のように、身のまわりにお師匠さんとな
る人がいたということもありますが、それをよく示しているのが『近衛
家熈臨書資料』(写真1・2)です。これは、古今東西の先人たちの優
れた書を家熈が写したもので、写真1は『新古今和歌集』の「真名序」
を、写真2は中国・唐の詩人白居易の詩文集『白氏文集』の一部を写し
ています。どちらの字もすっきりとしてとてもうまく、とくに、写真2
のオリジナルは「三跡」の一人、藤原行成が書いたと伝えられています。

ここで、二つをよくみると、「写す」といってもいくつかの方法があ
ったことがわかります。写真1は、薄い紙に写されているので、トレー
シングペーパーの要領でお手本の上からなぞった(模書)のでしょう。
写真2は、わきに置いたお手本を見ながら写した(臨書)ものです。こ
のほかに、字の輪郭を写し(双鉤)、なかを墨で塗る(てん墨)方法も
つかっていました。これらの方法で、家熈は優れた書をたくさん写し、
トレーニングをつみかさね、はじめて独自の書風を編みだしたのです。
ちなみに、オリジナルが残っているものは、比べてみると、じつに精巧
にできていて、彼の技術の高さに驚かされてしまいます。
こうした家熈の姿勢からは、一つ大事なことを学ぶことができるので
はないでしょうか?それは、基礎がしっかりとできてはじめて、応用を
きかせることができる、ということです。何ごとも基本には忠実であれ、
そんなことを改めて教えられた気がします。
(美術室 羽田 聡)



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