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京都国立博物館 メールマガジン 第17号 2008年9月10日
配信日時:2022/02/15 13:43
京都国立博物館 メールマガジン 第17号[KNM:0017]

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[ご挨拶]
暑かった今年の夏も、ようやく過ぎゆこうとしています。昨日は、と
ても涼しい風が吹いていたので、お昼休みに博物館の庭を散歩してきま
した。みなさんもご存じと思いますが、京博の敷地は、その一部が方広
寺大仏殿と重なっていて、柱に廻らした鉄輪や礎石など、大仏殿ゆかり
の品が庭に展示してあります。豊臣秀吉が天下泰平の祈りを込めて建立
した大仏殿。その規模は、なんと南北約88メートル、東西約54メート
ル、高さは約49メートルもあったといいます。その在りし日の豪壮華麗
なようすを思い浮かべながら、京博の庭を逍遙してみるのも一興ではあ
りませんか。
(学芸部長 小松大秀)



[特別展覧会] japan 蒔絵―宮殿を飾る 東洋の燦めき―
平成20年10月18日(土)縲・2月7日(日)
特別展示館

日本の蒔絵は「鎖国」の時代にも海外へ輸出されていました。遠く東
洋からもたらされる贅沢品として珍重され、各国の宮殿を飾りました。
この展覧会は、マリー・アントワネットのコレクションをはじめ、ヨー
ロッパの宮殿に伝わった数々の名品によって、日本の蒔絵のもうひとつ
の歴史を概観します。

展覧会詳細は→
http://japan-makie.jp/
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[特別展覧会「japan蒔絵」プレイベントコンサート]
音蒔会 縲恷ェ絵に聴く輝きの系譜縲彌r
蒔絵とは、金銀螺鈿の輝きを漆の表面に蒔き、
光と輝きを掌にする匠の技
音楽は、時間に蒔かれた光、時空を行き交い、
音絵巻を繰り広げる

日 時:平成20年9月20日(土)16:00開場 16:30開演
会 場:京都国立博物館 特別展示間(重要文化財) 中央ホール
出演者:東野珠実(笙/う(竹冠に于) /和琴)
稲葉明徳(篳篥/竹笛/楽琵琶)
IKUKO (Vocal/クリスタル・ボウル)

入場料:全席指定(平常展観覧券付)
S 席 3,500円
ペア席 5,000円(2席1組で販売)
A 席 2,000円

詳細は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/kouza/etc/tien/tien6.html

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[京都・らくご博物館]
京都国立博物館では、多くの皆様に親しまれる博物館づくりの一環とし
て、我が国の伝統芸能である落語を「京都・らくご博物館」と題して春
夏秋冬の年4回、開催時の季節に応じた演目で上演しています。

テーマ:「京都らくご博物館[秋]縲恚ム秋寄席縲怐@VOL.19」
日 時:平成20年10月24日(金)18:00開場 18:30開演
場 所:京都国立博物館 講堂
入場料:全席指定 3,000円(平常展観覧券付)
立見席      1,500円(椅子なし/平常展観覧券付)

※チケットの販売は9月10日(水)より開始いたします。

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[土曜講座]
毎週土曜日の午後1時30分から、当館講堂において、当館研究員が展
覧会や展示品に関連した講座を行っています。
参加費は無料。定員は176名です。
テーマによっては外部講師をお招きしています。
なお、毎月第2・4土曜日および特別展開催期間中の開催の全講座に関
して、講座当日の12時45分から渡り廊下にて入場整理券を発行します。
整理券がなくなり次第、受付を終了いたしますので、あしからずご了承
願います。
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平成20年9月13日
テーマ/康尚から定朝へ ―仏師の時代のはじまり―
講 師/主任研究員 淺湫 毅
*整理券発行

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平成20年9月20日
テーマ/道長の建築 ―寝殿の二間と源氏物語の野分逢瀬―
講 師/文化財管理監 中村 康

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平成20年9月27日
テーマ/真如堂縁起と掃部助久国
講 師/列品管理室長 若杉 準治
*整理券発行

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講座詳細は→http://www.kyohaku.go.jp/jp/kouza/kouza.html
携帯版は→http://www.kyohaku.go.jp/i/doyou.html



[博物館Dictionary] No.163
あなたに語る・時代を超えて生きる心

草花図襖「伊年」印(京都国立博物館蔵)について勉強してみよう。

画像はこちら→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/mmd/mmd163.html

脳の科学によると、左脳(さのう)が知識を、右脳(うのう)が感覚をつ
かさどっているそうですが、皆さんは、絵の前に立ったとき、何を描い
ているのかを見ようとしていますか(左脳型)?それとも、どんなふう
に描いているかを見ようとしていますか(右脳型)?学校の勉強で左脳
を使うことの方が多いせいか、右脳の方は、少しお休みがちになってい
るかもしれませんね。
 食材が同じでも、味つけが違(ちが)えば全(まった)く別の料理になる
のと同じように、同じものを描いても、どんなふうに描いているか(味
つけ)で全く違う絵になります。絵の味を、目と心で感じ分けたいもの
です。
 この絵では、どうでしょう。
 まず、何が描かれているのか。いろいろな草花(くさばな)が、4枚の
襖(ふすま)に描かれています。右から順に、竹と蔦(つた)、薔薇(ばら)
(トゲがありますね)、野薊(のあざみ)、秋海棠(しゅうかいどう)、芥子
(けし)、山帰来(さんきらい)、立葵(たちあおい)、菫(すみれ)、鶏頭(け
いとう)、葉鶏頭(はげいとう)、蜀黍(もろこし)の12種類。
 菫や山帰来、野薊、芥子は春の花。薔薇や立葵は夏の花。鶏頭や秋海
棠は秋の花。現実には、これらの草花が同時に咲くことはありません。
絵だからできるワザ。違う季節の草花を同時に見たい。それを実現して
います。
では、どんなふうに描かれているのか。全面に金箔(きんぱく)が押(お)
されていて、とても豪華(ごうか)な感じがします。その上に直接、絵の
具が塗(ぬ)られています。色は赤と緑。けっして派手(はで)ではなく、
落ちついていて、しっとりとした感じです。
輪郭線(りんかくせん)はなく、絵の具が濃淡(のうたん)をつけながら薄
(うす)く塗られ、薄いところでは、下から金がきらきらと輝(かがや)い
ています。金地を透(す)かすような素敵(すてき)な描き方がされてい
るんですね。
草花の配置(はいち)と伸(の)びる向きに注目(ちゅうもく)してみまし
ょう。ど真中は芥子の花。右端の竹から、左端の蜀黍まで、草花の根元
は半円状にならび、それぞれの草花の茎(くき)が円の半径のようになっ
て、中心にあたる芥子の方向に向かって伸びるように描かれています。
円環状(えんかんじょう)の独特(どくとく)な構図(こうず)をとっている
んですね。芥子の右側に野薊を配して、絶妙(ぜつみょう)なバランス
をとっていることも見逃(みのが)せません。地平線(ちへいせん)も地面
も描かない金色一色の画面上、草花の根元の位置と茎の向きだけで表わ
しているのです。どうですか?ひとつひとつは水平にみえますが、全体
としては、かなり高いところから野原を見下ろしているように見えてき
ませんか?
 作者について詳(くわ)しくは分(わか)りません。でも、俵屋宗達(たわ
らやそうたつ)という絵師と関係の深い作品と考えられています。俵屋宗
達は、桃山時代から江戸時代の初めに京都で活躍した絵師で、「風神・雷
神図屏風(ふうじんらいじんずびょうぶ)」の作者として有名ですよね。
 応仁の乱(おうにんのらん)で荒廃(こうはい)した京都では、「町衆」
(まちしゅう)という、裕福(ゆうふく)な商工業者(しょうこうぎょうし
ゃ)たちが構成する自治組織(じちそしき)が力をたくわえ、やがて、それ
までの武家(ぶけ)や公家(くげ)に代わって、新(あら)たな文化の担(に
な)い手となっていきます。
 宗達も、その「町衆」のひとりでした。「俵屋」という屋号(やごう)
の「絵屋」(えや)の経営者で、自分も製作し、職人である弟子たちを指
導していたようです。「絵屋」は、桃山時代から江戸初期にかけて登場し
た新しい職業で、色紙(しきし)や短冊(たんざく)の下絵、扇絵(おうぎえ)、
灯籠(とうろう)の絵、あるいは染織の描絵や下絵などを手がけ、製作し
た絵を店頭(てんとう)で販売したり、受注製作(じゅちゅうせいさく)を
行なったりしていました。
 「俵屋」は、高級ブランドとして、当時たいへんな人気を集め、やが
て、お寺や朝廷からも注文がくるようになります。その俵屋製とみられ
る金箔地に草花を描いた襖絵や屏風絵が何点かのこされています。その
なかで最も古く、すぐれた作品として昔から定評(ていひょう)があるの
がこの絵。宗達のすぐれた弟子のひとりによって描かれたとみられてい
ます。右端の下に、「伊年」と読めるハンコが捺(お)されていますね。こ
れは、俵屋ブランドのマークなのです。
右脳をフル回転させて、このおいしい絵を、じっくり味わってくださ
いね、心に栄養(えいよう)たっぷりの絵であること、保証付(ほしょうつ)
きですから。
(美術室 山下善也)

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