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京都国立博物館 メールマガジン 第13号 2008年5月8日
配信日時:2022/02/15 11:30
京都国立博物館 メールマガジン 第13号[KNM:0013]

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[ご挨拶]
 みなさん、お元気ですか?京都もいよいよ新緑の季節ですね。東山の
あたりも、遠くの山々から、近くのお寺の境内まで、深い緑、淡い緑、
艶やかな緑と、さまざまな木々の緑に囲まれています。もうちょっとす
ると京都も暑くなるので、ここしばらくが一年でもいちばん過ごしやす
い時期ということになりましょうか。
 ところで、話はかわりますが、当館で開催中の「絵画の冒険者ー暁斎」
展、もうご覧になりましたか?4月の8日にオープンしてからほぼ4週
間。もう65000人ものお客様にお越しいただきました。暁斎は、とても
多才な人で、狩野派の重厚な絵に始まって、おどろおどろしい妖怪の絵、
さらに軽妙洒脱な戯画にいたるまで、まさに融通無碍、自由自在の彩管
を絵絹の上にふるっています。こんなにいくつもの貌をもった絵師は、
世界的にみてもまさに希有の存在といえましょう。展覧会は5月11日
(日)までなので、会期ももう残り僅かです。「泣きたくなるほどおもし
ろい」がキャッチフレーズの暁斎展、ぜひお見逃しなきように!!
(学芸部長 小松大秀)


[特別展覧会:開催中] 没後120年記念 絵画の冒険者 暁斎 Kyosai
―近代へ架ける橋―
平成20年4月8日(火)縲・月11日(日)
特別展示館

 河鍋暁斎(1831縲・9)は、初め浮世絵を、次いで狩野派を学び、幕末・
明治期の江戸・東京で活躍しました。
 この展覧会では、暁斎没後120年を記念し、初期から晩年にいたる暁
斎の重要作品を選りすぐって紹介します。あっと驚く奇想的な作品はも
とより、暁斎の骨格を形づくった狩野派的側面をしめす作品もあわせた、
はじめての体系的な展示となります。
 当館では、伊藤若冲、曾我蕭白と、近世絵画の強烈な個性を紹介して
きました。今回の河鍋暁斎も、そのラインナップに加わる画家。単なる
奔放ではない、基礎的修練の上に生まれた強烈な個性は、あなたの心を
とらえてはなさいでしょう。


主な展示作品
・大和美人図屏風 部分〈コンドル旧蔵〉河鍋暁斎筆
・地獄太夫と一休 河鍋暁斎筆 福富太郎コレクション資料館
・地獄極楽めぐり図 河鍋暁斎筆 静嘉堂文庫美術館蔵 
・地獄極楽図 河鍋暁斎筆 東京国立博物館蔵 
・風俗鳥獣画譜のうち髑髏と蜥蜴 河鍋暁斎筆

展覧会詳細は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tokubetsu/080408_pre/tokubetsu.html
携帯版は→http://www.kyohaku.go.jp/i/ctokuten-gy.html



[特集陳列:開催中] 平安時代の考古遺物-源氏物語の時代-
平成20年4月2日(水)縲・月29日(日)
平常展示館2室

 今年、2008年は『源氏物語』が書かれてから一千年目とされます。作
者の紫式部は学問の才能を左大臣の藤原道長に認められ、道長の長女で
一条天皇の中宮である彰子の女房として宮仕えにあがりました。一条天
皇を中心とするこの宮廷での見聞が源氏物語執筆の根幹となったとされ
ています。
 展示の主役はその藤原道長が寛弘四年(1007)に大和国の金峯山に参
詣して埋納したひかり輝く金銅製の経筒(国宝、元禄時代に出土)です。
この経筒は間違いなく紫式部の生きた時代の作品なのです。道長が金峯
山の蔵王権現に捧げた願意がその表面に五百字余り刻まれています。日
本最古の埋納用経筒です。
 紫式部が仕えた上東門院彰子が長元四年(1031)に比叡山横川の如法
堂に納めた金銀に塗られた華麗な経箱(国宝、大正時代に出土、延暦寺
蔵)も父道長の経筒の隣にならべます。女院の奉納品らしい繊細優美な
経箱であり、平安時代を代表する金工作品です。
また藤原氏墓地とされる宇治市木幡から出土した青磁水注は中国越州
窯で製作されたもので、平安時代半ばの貴族たちがこのような高価な舶
来の品を所有していたことを示しています。紫式部もこのような青磁の
器を目にしたかもしれません。
 あわせて道長造営の法成寺の軒瓦や京都周辺出土の経塚遺物などを展
示し、紫式部の生きた平安時代の様子を考古遺物を通じて紹介いたしま
す。 



主な展示作品

京都市・豊楽院跡出土鬼瓦 
重文 京都市・平安宮跡出土鬼瓦・緑釉軒丸瓦・緑釉軒平瓦・緑釉鴟尾残
欠 当館 
重文 京都市・山科区北大日出土緑釉骨壺 
京都市・上京区上庄田瓦窯出土鴟尾残欠 
奈良・御所市増出土緑釉草花文瓶 
重文 線刻阿弥陀五仏鏡像〈永延二年在銘〉
国宝 奈良・金峯山経塚出土金銅藤原道長経筒 金峯神社 
国宝 滋賀・比叡山横川如法堂跡出土金銀鍍宝相華文経箱 延暦寺 
国宝 奈良・金峯山経塚出土のうち金銀鍍双鳥宝相華文経箱・金銅経箱二
合 金峯山寺 
重文 宇治市・木幡金草原出土青磁水注 当館 
京都市・上京区法成寺跡出土軒丸瓦・軒平瓦 京都府立鴨沂高等学校 
京都市東山区法性寺跡出土軒丸瓦・軒平瓦 当館 
京都市・左京区鞍馬寺経塚出土品 
重文 京都市・左京区花脊別所経塚出土品

重文 伝和歌山市・六十谷出土緑釉経筒 当館
画像は→
http://www3.kyohaku.go.jp/cgi-bin/list.cgi?gazo_no=1&mz_synm=0000006738&name1=%CE%D0%EE%D8%B7%D0%C5%FB&limit_no=0

国宝 滋賀・叡山横川如法堂跡出土金銀鍍宝相華文経箱 延暦寺
画像は→http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/genji/g1.html

展覧会詳細は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/genji/genji.html
携帯版は→http://www.kyohaku.go.jp/i/ctokutin-gen.html



[京都・らくご博物館]
京都国立博物館では、多くの皆様に親しまれる博物館づくりの一環とし
て、我が国の伝統芸能である落語を「京都・らくご博物館」と題して春
夏秋冬の年4回、開催時の季節に応じた演目で上演しています。
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次回予告
平成20年8月22日(金) 18:00開場 18:30開演
テーマ/京都・らくご博物館【夏】納涼寄席vol.18 
出演者/桂 そうば 桂 吉坊 桂 吉弥
    「おんな道楽」内海 英華 桂 千朝
演目/当日のお楽しみ!
入場料/座席指定(平常展観覧券付)3,000円
立見席(椅子なし/平常展観覧券付)1,500円
夏のオリンピックばかりでなく、らくご博物館もお楽しみください。
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[土曜講座]
毎週土曜日の午後1時30分から、当館講堂において、当館研究員が展
覧会や展示品に関連した講座を行っています。
参加費は無料。定員は176名です。
テーマによっては外部講師をお招きしています。
なお、毎月第2・4土曜日および特別展開催期間中の開催の全講座に関
して、講座当日の12時45分から渡り廊下にて入場整理券を発行します。整理券がなくなり次第、受付を終了いたしますので、あしからずご了承
願います。
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平成20年5月10日
テーマ/暁斎のおもしろさ?
講師/同志社大学教授 狩野博幸氏
*整理券発行/特別展覧会「絵画の冒険者 暁斎 Kyosai竏昼゜代へ架け
る橋竏秩v(4/8縲・/11)関連土曜講座
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平成20年5月17日
テーマ/【国際博物館の日記念講演会】山形・熊野神社の神像
講師/主任研究員 淺湫毅
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平成20年5月24日
テーマ/南蛮漆器の大航海
講師/主任研究員 永島明子
*整理券発行/特集陳列「新収品展」(5/21縲・/22)関連講座
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平成20年5月31日
テーマ/陳箴(ちんしん)の鳥花山水図
講師/学芸部副部長・上席研究員 西上実
*特集陳列「新収品展」(5/21縲・/22)関連講座
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講座詳細は→http://www.kyohaku.go.jp/jp/kouza/kouza.html
携帯版は→http://www.kyohaku.go.jp/i/doyou.html


[博物館Dictionary] No.159
あなたに語る・時代を超えて生きる心

平常展示館1階6室(彫刻)の神像について勉強してみよう。

伝十王坐像(でんじゅうおうざぞう) 山形・熊野神社蔵(やまがた・
くまのじんじゃぞう)

画像(文殊渡海図 金戒光明寺蔵)は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/mmd/mmd158-1.html


みなさんは樹齢何百年(じゅれいなんびゃくねん)という大樹(たいじ
ゅ)をみてどのように感じますか。自分のおじいさんのそのまたおじい
さんのおじいさんの・・・と、きりがありませんが・・・さらにおじい
さんが生まれたころからずーっと生きてきた、と思うとすごく不思議(ふ
しぎ)な気持ちになってきますね。長くても百年ほどしか生きられない
人間(それでも動物の中ではとても長いほうですが)からみると、想像
(そうぞう)もできません。そこにはなんとなく人間の理解(りかい)
をこえた存在(そんざい)―たとえば神様のような―の力を感じてしま
います。
それは昔(むかし)の人も同じだったようで、そういった巨大(きょだ
い)な樹木(じゅもく)を「ご神木(しんぼく)」として、神様と同じ
ように信仰(しんこう)してきました。今でも神社の境内(けいだい)
などに大きな木が植(う)えられ、しめ縄(なわ)が飾(かざ)られて
いるのをよくみることでしょう。この博物館の近くの新熊野(いまくま
の)神社にも大きなクスノキがあります。周囲(しゅうい)をめぐるし
め縄は15メートルもの長さが必要(ひつよう)ということですから、
そのまわりでみなさんが手をつなぐとしたら、いったい何人必要になる
のでしょうか(神社の人に断(ことわ)りなく勝手(かって)にやって
はいけませんよ)。きっと10人ではたりないのでは。
また、今年はもう散(ち)ってしまいましたが、毎年春の訪(おとず)
れとともに咲(さ)き乱(みだ)れ、あっという間(ま)に散っていく
桜(さくら)の花も、どうして毎年毎年同じころに、まるで春を告(つ)
げるかのように咲くのか、昔の人はさぞや不思議に思ったことでしょう。
やはりそこには、人智(じんち)をこえた神様の存在を考えたのではな
いでしょうか。とくに農耕(のうこう)を行(おこ)なっていた人たち
にとっては、「さあ春が来ました。種まきを始めましょう」という、神
様のかけ声のようにも思えたでしょう。
このように、われわれの先祖(せんぞ)たちは樹木を神様が宿(やど)
るもの、あるいは神様そのものとして、畏(おそ)れ敬(うや)まって
きたのです。現在でも日本の国は、その三分の二を森林(しんりん)が
しめているといいます。それは、まさに森の国の住人(じゅうにん)に
ふさわしい信仰といえるでしょう。
現在第6室には、山形県寒河江市(やまがたけんさがえし)の平塩(ひ
らしお)にある熊野神社に祀(まつ)られる神像(しんぞう)を展示(て
んじ)しています。長年(ながねん)の風雪(ふうせつ)により表面(ひ
ょうめん)がだいぶ傷(いた)んでいますが、それでもキリっとした表
情(ひょうじょう)が十分うかがえることと思います。衣(ころも)の
起伏(きふく)なんかにも現実感(げんじつかん)があります。このよ
うな作風(さくふう)から、この神像は平安時代(へいあんじだい)の
終わり、12世紀後半ころにつくられた像と考えられています。今から
800年以上も昔につくられたものなのです。そしてこの像の最大(さ
いだい)の特徴(とくちょう)は、腕(うで)や膝(ひざ)などの張(は)
り出した部分を除いては、一本の巨大なトチの木から彫(ほ)り出され
ていることです。よくみると、かたくて彫刻(ちょうこく)しづらい節
(ふし)の部分までが含(ふく)まれていることに気づきます。

画像(伝 十王坐像 山形・熊野神社蔵)は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/mmd/mmd159-1.html
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/mmd/mmd159-2.html


この時代にはすでに、小さな木をいくつか寄(よ)せ集(あつ)めてひ
とつの彫刻作品をつくるという技術(ぎじゅつ)が完成(かんせい)し
ていましたので、実は一本の木から丸まるひとつの像を彫り出すという
のは、当時としても古い時代のつくり方だったのです。それはどうして
なのでしょうか。えっ、この像を作った彫刻家(ちょうこくか)が時代
遅れの人だったからですって? いえいえ、そうではありません。その
証拠(しょうこ)に、本当にこのような表情(ひょうじょう)をした人
が実際(じっさい)にいるんじゃないかと思えるような、この像の現実
感あふれる表現というのは、当時の都(みやこ)、京都でも最先端(さ
いせんたん)のものでした。
では、なぜ表現としては最先端なのに、このような古いつくり方になっ
たのでしょうか。その理由(りゆう)は、最初(さいしょ)のほうで書
いた巨大な樹木に対する信仰、ということと関係(かんけい)していま
す。おそらくこの像に用いられているトチの木は、ご神木など、なんら
かの神聖(しんせい)な樹木であったのでしょう。だからこそ、本来(ほ
んらい)は彫刻には使いづらい節の部分までも丸ごと利用(りよう)し
て彫り出しているのです。つまり、このトチの木は単なる彫刻の材料(ざ
いりょう)なのではなく、この木自体が神様そのものでもあったのです。
(美術室 淺湫毅(びじゅつしつ あさぬまたけし))


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