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京都国立博物館 メールマガジン 第9号 2008年1月11日
配信日時:2022/02/15 10:55
京都国立博物館 メールマガジン 第9号[KNM:0009] 

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[ご挨拶]
 5日から、特別展覧会「憧れのヨーロッパ陶磁竏茶}イセン・セーヴル・
ミントンとの出会い竏秩vがいよいよ始まります。ヨーロッパ各地の魅力
的なやきものが多数展示されるのはもちろんですが、東洋への憧れから
誕生したヨーロッパ陶磁器が、逆に日本に輸入されて日本のやきものに
どのような影響を与えたのかといった、両者の相互関係についての展覧
会担当者の尾野さんの最新の研究成果も、今回の展覧会大きな見どころ
です。ぜひ、ご来館ください。
 また、1月2日からは、織田信長が桶狭間の合戦で今川義元から分捕
ったという刀などを展示した「社寺伝来の名刀」、江戸時代に京都で活躍
した仏師が余技に作った風俗人形などを紹介する「仏師清水隆慶竏著Vい
らくのてんごう竏秩v、この二つの特集陳列もはじまります。特別展覧会の
観覧後、お疲れでしょうが、ぜひ平常展示館へも足をお運び下さい。美
との新たな出会いがあなたを待っているはずです。
(Y.N)

[特別展覧会:開催中] 憧れのヨーロッパ陶磁―マイセン・セーヴル・ミントンとの出会い―
平成20年1月5日(土)縲・月9日(日)
特別展示館

 いつの時代も、人は異国に対して一種の畏れを感じる一方で、強い憧
れをもつようです。このところ、高級食器としてのヨーロッパ陶磁が人
気を博し、テーブル・コーディネートで活躍している背景にも、おそら
くある種の「異国趣味(エキゾチシズム)」があるのでしょう。しかし、
日本人とヨーロッパ陶磁との出会いは、そんなにごく最近のことではあ
りません。早くも江戸時代初めから日本人はヨーロッパのやきものを賞
翫してきており、その歴史はすでに四百年近くにも及んでいます。
 江戸時代の日本人に愛されたヨーロッパ陶磁とは、一体どのようなも
のだったのか? そして、日本へもたらされるヨーロッパ陶磁は、明治
維新をはさんで、どのように変貌していったのでしょうか?
 大英帝国がその繁栄を誇ったヴィクトリア女王の時代に活躍した著名
な工芸デザイナー クリストファー・ドレッサーが選び、日本へもたらし
たイギリス陶磁。約百年前にニーダー・シュレジエンのフリッツ・ホッ
ホベルク伯爵から贈られたマイセン・ベルリンなどのドイツ陶磁。それ
らに加えて、オランダ・フランス・デンマーク・ハンガリーなど、ヨー
ロッパ各地の魅力的なやきものおよそ百七十件を紹介します。
 さらに、ヨーロッパ陶磁のデザインの源流となった東洋のやきものや、
逆にヨーロッパの影響を受けて作られた日本の陶磁器を通して、洋の東
西を超えた文化の相互影響をさぐります。江戸から明治時代の日本人が
実際に目にしたヨーロッパ陶磁の数々を通して、彼らが感じたであろう
異国情緒にひたってみませんか。


主な展示作品
・多彩釉白泥花唐草文飾壺 イギリス ミントン 東京国立博物館蔵
・青地色絵飛鳥文皿 イギリス ミントン 東京国立博物館蔵
・瑠璃地金彩窓絵人物図双耳壺 フランス セーヴル 東京国立博物館
蔵
・色絵楽奏猿像〈猿のオーケストラ〉ドイツ マイセン 京都国立博物
館蔵
・色絵薔薇花形カップ ドイツ マイセン 京都国立博物館蔵

展覧会詳細は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tokubetsu/080105/tokubetsu.html
携帯版は→http://www.kyohaku.go.jp/i/ctokuten-yo.html


[新春特集陳列] 社寺伝来の名刀
平成20年1月2日(水)縲・月11日(月・祝)
平常展示館16・17室

 何かの祈願のため、神や仏に刀剣を奉納することは、古代まで遡るこ
とのできる風習です。それは、刀剣そのものに魂が宿るという観念や、
不動明王など密教仏の象徴が剣であるといった考え、神が用いる道具を
宝物として奉献した古神宝など、さまざまな宗教的意味合いが込められ
ています。
 京都にある社寺にも、少なからざる刀剣が奉納され、今に伝わってい
ます。この度の特集陳列では、京都とその周辺の有名社寺に伝来した刀
剣の中から、名刀と呼ぶべき品々を紹介します。なかで最も古いものは、
平安時代前期まで遡る黒漆大刀(重文、鞍馬寺蔵)で、
坂上田村麿の佩刀と伝えます。そ
のほか、鎌倉時代、源氏ゆかりの太刀(重文、大覚寺蔵)や、足利将軍
家・豊後大友家などを転々とした刀(重文、豊国神社蔵)、織田信長が桶
狭間合戦で今川義元から分どったという刀(重文、建勲神社蔵)、豊臣秀
吉奉納と伝え「笹丸」と号する革包太刀(重文、愛宕神社蔵)、奈良県談
山神社に伝わる金色の太刀(談山神社蔵)、江戸幕府によって京都祇園社
の三柱の祭神に奉納された太刀と宝剣(太刀は重文、八坂神社蔵)など、
見ごたえ十分です。また京都・若王子神社、奈良・春日大社、愛知・猿
投神社などにかつて伝来し、今は個人の所蔵になるものもあわせて展示
します。これらの品々より、社寺と刀剣のつながりの奥深さに目を見張
られることと思います。ご期待ください。


主な展示作品

◎薙刀直シ刀 伝吉光 名物骨喰藤四郎(豊国神社)
画像は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/img/denrai/d1.jpg

錦包玉纒剣(八坂神社)
画像は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/img/denrai/d3.jpg

[平安時代]
◎黒漆大刀(鞍馬寺)
[鎌倉時代]
◎太刀 □忠(大覚寺)
太刀 来国俊 附沃懸地菊紋蒔絵毛抜形太刀拵(仁和寺)
◎太刀 大和則長 附金梨地菊桐紋蒔絵糸巻太刀拵(泉涌寺)
◎太刀 豊後国行平(八坂神社)
短刀 伝天国 号瀬登剣 京都・熊野若王子神社伝来
[南北朝時代]
◎刀 義元左文字(建勲神社)
◎革包太刀 号笹丸(愛宕神社)
[室町時代]
毛抜形黒漆太刀(御香宮)
金箔押革包太刀(談山神社)
黒漆太刀 中身長船則光 奈良・春日大社伝来
黒漆塗毛抜形太刀・黒漆太刀 愛知・猿投神社伝来
短刀 長船祐定(貴船神社)
三鈷柄剣(高山寺)
[桃山時代]
◎倶利迦羅竜蒔絵合口剣 中身 尚宗(妙心寺)
○太刀 平安城住国路(御霊神社)
○太刀 藤原国広 附金梨地鳩紋蒔絵糸巻太刀拵(幡枝八幡宮)
[江戸時代]
◎金梨地木瓜紋蒔絵糸巻太刀 中身 出羽大掾藤原国路 金具御大工躰阿
弥
黒漆木瓜紋螺鈿剣・金梨地木瓜紋蒔絵剣 中身 出羽大掾藤
原国路 金具御大工躰阿弥(以上八坂神社)
薙刀 肥前忠吉(仁和寺)
刀 相模守源来義道(許波多神社)
太刀 信高 信照(建勲神社)

展覧会詳細は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/denrai/denrai.html
携帯版は→http://www.kyohaku.go.jp/i/ctokutin-mt2008.html.html



[新春特集陳列] 仏師 清水隆慶―老いらくのてんごう―
平成20年1月2日(水)縲・月30日(日)
平常展示館5・6室

 みなさんは仏師というと、どの時代の誰を思い浮かべますか。多くの
人は飛鳥時代の止利仏師、平安時代の定朝、鎌倉時代の運慶や快慶と
いったところを、まずは最初に思い浮かべるのではないでしょうか。そ
れは、仏像を専門とする研究者にしても同様で、近世の仏師については、
これまであまり研究が行なわれてきませんでした。ところが近年になっ
て、江戸時代の仏師や彼らが製作した仏像などにも次第に注目が集まっ
てきています。
 今回特集する清水隆慶も、江戸時代に京都で活躍した仏師で、四代ま
で続きました。今回はそのうち、麟岡と名乗った初代(一六
五九縲怦齊オ三二)と、毘首門亭を名乗った二代(一七
二九縲恚繻ワ)の作品を展示します。といっても仏像ではなく、仏師の余
技ともいうべき風俗人形の類が中心です。初代隆慶自身は、これらを「老
いらくのてんごう(老人のいたずら)」と称しました。仏像造りに使う技
能を世俗的なものに使ってしまった、という照れからでしょうか。しか
し、さまざまな造形上の約束事がある仏像にくらべると、これら人形類
は、自由な発想でのびのびと製作され、巧みな彫技が遺憾なく発揮され
ています。江戸時代の京仏師のてんごうぶりを、じっくりとご覧ください。


主な展示作品

百人一衆
画像は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/img/ryukei/r2.jpg
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/img/ryukei/r1.jpg

[江戸時代]
初代清水隆慶位牌
二代清水隆慶位牌
関羽立像
竹翁坐像
維摩居士坐像
大黒天立像
髑髏
富士見西行像
千利休立像
展覧会詳細は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/ryukei/ryukei.html
携帯版は→http://www.kyohaku.go.jp/i/ctokutin-oi.html


[京都・らくご博物館]
京都国立博物館では、多くの皆様に親しまれる博物館づくりの一環とし
て、我が国の伝統芸能である落語を「京都・らくご博物館」と題して春
夏秋冬の年4回、開催時の季節に応じた演目で上演しています。
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平成20年1月25日(金) 18:00開場 18:30開演
テーマ/京都・らくご博物館[冬]新春寄席vol,16 
出演者/桂 福丸 桂 歌之助 桂 雀々 桂 米左 桂 福団治
演目/当日のお楽しみ!
入場料/立見席(椅子なし/平常展観覧券付)1,500円
*注:椅子席は売り切れました。
笑門来福!京都らくご博物館で新春を言祝ぎましょう。
●チケットのお求め方法
1. ご来館の方への窓口販売 
販売場所:京都国立博物館 南門観覧券売場(七条通側)
販売時間:開館日の閉館30分前まで。
ただし、第2、第4土曜日は無料観覧日のため販売いたしません。
2. 電話:075-531-7504(京都国立博物館 総務課事業推進係)
 (受付時間は月曜日から金曜日の10:00縲・7:00。祝日は除く)
3.WEBからの申込み
申込は→https://www7.kyohaku.go.jp/KNM/servlet/Main
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[チェンバロミニコンサート]
実際にヨーロッパ陶磁が使われていた空間を体感していただくために
ディスプレイされた特別展示館中央ホールにて、「憧れのヨーロッパ陶
磁」展に展示されている作品たちが作られた時代に、奏でられていたで
あろう音楽をお送りします。演奏は中野振一郎門下の筆頭の演奏家・吉
田朋代さんです。
毎週金曜日の朝、優雅なひとときをお過ごしください。
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会期/特別展「憧れのヨーロッパ陶磁」開催期間中の毎週金曜日
 午前10時より20分程度
1月11・18・25日、2月 1・ 8・15・22・29日、3月7日
出演者/吉田朋代
入場料/特別展覧会「憧れのヨーロッパ陶磁」の観覧料が必要になりま
す。
会場/特別展示館 中央ホール
イベント詳細は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tokubetsu/080105/gaiyou/event.html
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[バレンタインコンサート]
特別展覧会「憧れのヨーロッパ陶磁」に出展される色絵楽奏猿像「猿
のオーケストラ」。フリッツ・ホッホベルク伯爵から贈られたマイセンで
すが、この猿たちが持っている楽器は1760年代のもの。型を作った当時、
果たしてヨーロッパではどのような音楽が聞かれていたのでしょうか…。
当公演では「当時の楽器」を使い、ハイドンやモーツァルトの音楽をそ
の時代の音として再現します。音楽を通してマイセンの魅力を実感でき
るという企画です。
 演奏はドイツの名手クリスティーネ・ショルンスハイムとチェンバロ
の中野振一郎を師とする若きフォルテピアノ奏者・高田泰治と、「ウィー
ン仕込みの古典派」が魅力のヴァイオリン奏者・大谷史子。指揮者・延
原武春のお話しとともに展開するマイセンの「音体験」を楽しんでいた
だける内容です。
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会期/平成20年2月13日(水)18時30分 開演(18時開場)
出演者/延原武春 お話し(日本テレマン協会/代表)
高田泰治 フォルテピアノ/大谷史子 ヴァイオリン
演目/ F.J.ハイドン
   /3つのソナタ
    第40番 ト長調 Hob.??竏窒S0
    第41番 変ロ長調 Hob.??竏窒S1
    第42番 ニ長調 Hob.??竏窒S2

W.A.モーツァルト
   /ソナタ 第3番 変ロ長調 K.281(189f)
   /ヴァイオリン・ソナタ ト長調 K.301
                       ほか
※曲目は都合により変更されることがあります。
入場料/座席指定 S席 3,000円、 ペア席 5,000円
(*本料金に特別展覧会の観覧料は含まれておりません)
会場/京都国立博物館 講堂
イベント詳細は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tokubetsu/080105/gaiyou/event2.html
●チケットのお求め方法(1月16日(水)より開始)
1. ご来館の方への窓口販売 
販売場所:京都国立博物館 南門観覧券売場(七条通側)
販売時間:開館日の閉館30分前まで。
ただし、第2、第4土曜日は無料観覧日のため販売いたしません。
2. 電話:075-531-7504(京都国立博物館 総務課事業推進係)
 (受付時間は月曜日から金曜日の10:00縲・7:00。祝日は除く)
3.WEBからの申込み
申込は→https://www7.kyohaku.go.jp/KNM/servlet/Main 
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[土曜講座]
毎週土曜日の午後1時30分から、当館講堂において、当館研究員が展
覧会や展示品に関連した講座を行っています。
参加費は無料。定員は176名です。
テーマによっては外部講師をお招きしています。
なお、特別展覧会開催中および特別展覧会開催中以外の毎月第2・4土
曜日開催の講座に関しては、講座当日の12時45分から渡り廊下にて入
場整理券を発行します。整理券がなくなり次第、受付を終了いたします
ので、あしからずご了承願います。
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平成20年1月5日
冬期休講--------------------------------------------------------------------------------
平成20年1月12日
テーマ/中国の追儺(おにやらい)図
講師/上席研究員 西上実
*整理券発行
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平成20年1月12日
テーマ/万国博覧会とヨーロッパ陶磁
講師/九州国立博物館企画課長 伊藤嘉章氏
*整理券発行/特別展覧会「憧れのヨーロッパ陶磁竏茶}イセン・セーヴ
ル・ミントンとの出会い竏秩v(1/5縲・/9)関連土曜講座
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平成20年1月26日
テーマ/清水隆慶とその時代
講師/町田市立博物館館長 田邉三郎助氏
整理券発行/新春特集陳列 「仏師 清水隆慶竏著Vいらくのてんごう竏秩v
(1/2縲・/25)関連土曜講座
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講座詳細は→http://www.kyohaku.go.jp/jp/kouza/kouza.html
携帯版は→http://www.kyohaku.go.jp/i/doyou.html


[成人の日記念:きもの特典]
京都市では、成人の日に、地域・社会全体で、新成人の晴れの門出を
祝う気運が生まれ、「おめでとう」「ありがとう」の心の交流が溢れるま
ちを目指し、「はたちプロジェクト」として毎年様々な取組を実施してい
ます。
京都国立博物館も事業に参画し、1月14日(月・祝)「成人の日」に、
京都市主催の成人式にご出席され、きもの特典利用チケット(成人式で
配布)を受け取られた、きもの着用の新成人の方に関しましては平常展
示を無料でご観覧いただけます。是非、御利用下さい。
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[博物館Dictionary] No.155 
あなたに語る・時代を超えて生きる心

初夢(はつゆめ)の絵

 みなさんは「一富士、二鷹、三茄子(いちふじ、にたか、さんなすび)」
という諺(ことわざ)を知っていますか?。
 そうです、初夢(元日(がんじつ)もしくは二日の夜にみる夢)にみ
るとすごく縁起(えんぎ)が良いとされる、夢のベスト・スリーです。
今でこそ初夢が話題(わだい)にのぼることはめったにありませんが(と
くに若い世代ではそうでしょう)、昔はその年が自分にとって良い年か
どうかを初夢の内容で占うことが盛(さか)んに行われていました。
 もちろん、夢を選んでみることはできません。そこで人々の間では、
七福神(しちふくじん)や米俵(こめだわら)、いろんな宝物をのせた
宝船(たからぶね)の絵を枕(まくら)の下に敷(し)いて寝るという
風習(ふうしゅう)が生まれました。正月になると、その絵を売り歩く
人の声(「お宝、お宝」と呼んでいた)がそこかしこから聞こえてきた
といわれているので、その流行ぶりが偲(しの)ばれましょう。また宮
中(きゅうちゅう)では、「獏(ばく)」の文字を帆(ほ)に書き込ん
だ宝船の絵がもてはやされました。獏は、熊のような体に象のような鼻
をもち、目は犀(さい)、尾は牛、足は虎(とら)に似るという、中国
の空想上の動物です。銅や鉄のほかに人の悪夢を食べると伝えられてい
たところから、念押(ねんお)しの意味でその名前が書き添(そ)えら
れたのでしょう。このように、良い初夢をみればきっと良い年になると
いう考えは、身分や職業の違いとは関係なく、広く信じられていたので
す。
 では、富士、鷹、茄子が初夢のベスト・スリーに挙げられるのはなぜ
でしょう?。
 これには、さまざまな説があるようです。ひとつは、駿府城(すんぷ
じょう)にいた徳川家康(とくがわいえやす)が初物(はつもの)の茄
子の値段(ねだん)が高いことをいうために、富士と愛鷹山(あしたか
やま)(富士の南東に位置する山)の高さを例に挙げたことに基(もと)
づく説。ふたつめは、天下人(てんかびと)・家康が富士の絶景(ぜっ
けい)と鷹狩り、初茄子を好んだことによるという説。三つめは、その
年を無事(ぶじ)(富士)に過ごし、高(鷹)く飛躍(ひやく)し、ま
た物事(ものごと)を成(な)す(茄子)ところからきたという説が代
表的なものですが、真偽(しんぎ)のほどは定(さだ)かではありませ
ん。また文献史料(ぶんけんしりょう)を探(さぐ)ってみても、この
諺は桃山時代以前にはまったく見出(みいだ)すことができないので、
やはり江戸時代になってから生まれたと考えるのが正しいように思いま
す。
 でも、富士や鷹、茄子の絵自体は、それよりもずっとずっと前から描
かれ続けてきました。富士はわが国を代表する名山(めいざん)・霊峰
(れいほう)として平安時代の聖徳太子絵伝や鎌倉時代の絵巻物の中に
登場しますし、室町時代に入ると水墨画の画題(がだい)にもなってい
ます(画像1)。また鷹は、鷹狩りの流行(りゅうこう)ともあいまっ
てその猛々(たけだけ)しい姿(すがた)が武士たちの好むところとな
り、頻繁(ひんぱん)に絵画化されたことが知られています(画像2)。
さらに茄子は、南瓜(かぼちゃ)や栗(くり)などといっしょに描かれ
たりすることが多いのですが(画像3)、これら生命力旺盛(おうせい)
な野菜や果実には仏心(ぶっしん)が宿(やど)ると伝えられ、古くか
ら禅宗社会(ぜんしゅうしゃかい)を中心に制作されました。荘重(そ
うちょう)な富士や雄々(おお)しい鷹の姿とともに、茄子が初夢ベス
ト・スリーに位置づけられているのは、案外(あんがい)、このあたり
に遠い起源(きげん)があるのかもしれません。

画像1(富士図 是庵筆)は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/mmd/mmd155-1.html
画像2(鷹図 等梅筆)は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/mmd/mmd155-2.html
画像3(蔬菜図扇面 信俊印)は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/mmd/mmd155-3.html


 みなさんは、もう初夢をみましたか?。もしまだみていないというの
なら、何はさておきこれらの絵を瞼(まぶた)に焼き付けてください。
三つとも夢に登場(とうじょう)させるのはちょっと欲張(よくば)り
でしょうが、ひとつくらいなら出てくるかもしれませんよ。
この2008年が、みなさんにとって良い年でありますように。
(美術室 山本英男)



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