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京都国立博物館 メールマガジン 第4号 2007年9月3日
配信日時:2022/02/14 16:54
京都国立博物館 メールマガジン 第4号[KNM:0004] 

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[ご挨拶]
8月から引き続き今月の17日まで、先月紹介した特集陳列「大覚寺の
名宝」が開催されています。さらに、5日からは平常展示が大幅に変わ
り、俵屋宗達筆の「風神雷神図屏風」、中国の元時代の「宮女図」、同じ
く元時代の古林清茂の墨跡「月林」道号といった、国宝中の国宝が展示
されます。平常料金でこれだけの名品をお見せできるのが、京博の誇り
です。御来館を御待ちしています。
(Y.N)

[特別展覧会:予告] 狩野永徳
10月16日(火)縲・1月18日(日)
特別展示館

信長、秀吉といった時の権力者に重用され、豪壮華麗な絵画様式を確立
した天才絵師・狩野永徳。
 この展覧会では、桃山画壇の頂点に君臨しながらも、描いた作品のほ
とんどが灰燼に帰したといわれる狩野永徳の画業の全貌に迫ります。
 永徳の代表作はもちろん、伝永徳ならびに父松栄や弟宗秀、長男光信
ら永徳と同時代に活躍した狩野派絵師の作品や、海外からの里帰り品、
初公開・新発見の作品をあわせた約70件が一堂に会します。
 永徳芸術の真髄に触れる史上初の大回顧展、ぜひご高覧ください。

主な展示作品
・国宝 花鳥図襖 狩野永徳筆 聚光院蔵
・重要文化財 仙人高士図屏風 狩野永徳筆 京都国立博物館蔵
・織田信長像 狩野永徳筆 大徳寺蔵
・洛外名所遊楽図屏風 狩野永徳筆
・国宝 檜図屏風 東京国立博物館
・国宝 洛中洛外図屏風 米沢市上杉博物館
・重要文化財 群仙図襖 南禅寺

展覧会詳細は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tokubetsu/070710/tokubetsu.html
携帯版は→http://www.kyohaku.go.jp/i/ctokuten-ei.html

公式ホームページは→
http://eitoku.exh.jp/
公式ホームページ携帯版は→http://eitoku.exh.jp/k/

[特集陳列:開催中] 後宇多法皇入山七〇〇年記念 大覚寺の名宝
8月8日(水)縲怩X月17日(月・祝)
平常展示館8縲・0・17室

 京都・嵯峨の名刹、大覚寺は、嵯峨天皇の離宮であった嵯峨院を貞観
十八年(876)淳和天皇の皇后正子が寺に改め、恒寂法親王を開山とした
のがその始まりです。嵯峨の地は、平安時代には皇族や貴族の遊興の地
でしたが、同時代の大覚寺の動向については、残念ながら詳しいことが
わかりません。
 そのような大覚寺が復興する機縁となったのが、後宇多天皇の入山(入
寺)であります。後宇多天皇は、仏教ことに密教に深く帰依し、徳治二
年(1307)四月十四日、醍醐寺報恩院の憲淳より密教の重要な儀式であ
る伝法灌頂を受けましたが、同年七月二十四日の皇后遊義門院の崩御を
縁として二日後の二十六日、嵯峨寿量院において仁和寺真光院の禅助大
僧正(1247縲・330)を師として出家、僧名を金剛性と号して大覚寺に入
山されたのです。天皇、四十一歳のことでした。師である仁和寺の禅助
大僧正に対しては、きわめて厚い礼をもって終生の師と仰がれたのです。
このようなことにも、天皇の真摯な人柄がよく表れています。その天皇
は、密教の僧「伝法阿闍梨金剛性」として数々の聖教類や書跡を残して
いますが、元亨元年(1321)には大覚寺の金堂や僧房などの伽藍の造営、
再興に力を尽くしました。まさに大覚寺の「中興の祖」であり、現在の
大覚寺の基礎を築いた人なのです。
 本年は、その後宇多天皇が大覚寺に入山されて、ちょうど七百年とい
う節目にあたります。これを記念して開催されるのがこの特集陳列です。
今回は、後宇多天皇の自筆の書跡や聖教類、更には宸殿を飾っている桃
山時代の画家狩野山楽の襖絵、平安時代の仏師明円の唯一の作例である
五大明王像などの優品を選りすぐって展示いたします。

主な展示作品(●…国宝 ◎…重要文化財)
●後宇多天皇宸翰御手印遺告 一巻
画像は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/daimei/d3.html
●後宇多天皇宸翰弘法大師伝 一幅
画像は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/daimei/d4.html
◎後宇多天皇宸翰灌頂印明 六巻
◎後宇多天皇像 一幅
画像は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/daimei/d2.html
◎五大明王像 明円作 五躯
画像は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/daimei/d1.html
十一面観音菩薩立像 一躯
◎牡丹図 狩野山楽筆 襖十面
◎紅白梅図 狩野山楽筆 襖六面

展覧会詳細は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/daimei/daimei.html
携帯版は→http://www.kyohaku.go.jp/i/ctokutin-daikaku.html


[平常展示] 国宝 風神雷神図屏風 俵屋宗達筆
9月5日(水)縲怩X月30日(日)
平常展示館11室

このたび、建仁寺より寄託されている「国宝 風神雷神図屏風 俵屋
宗達筆」が9月5日から30日まで平常展示館11室にて展示されること
になりました。
 款記も印章もそなわらないこの屏風が、俵屋宗達(生没年不詳)であ
ることを疑う人はおりません。
 ここに貼りつめられた金箔は、描かれる物象の形を際立たせ、金自体
が本然的にもっている装飾的効果として働いています。そればかりでは
なく、この屏風においては、金箔の部分は無限の奥行をもつある濃密な
空間に変質しています。つまり、この金箔は、単なる装飾であることを
超えて、無限空間のただなかに現れた鬼神を描くという表現意識を裏打
ちするものとして、明確な存在理由をもっています。傑作と呼ばれるゆ
えんがここにあります。
誰しも教科書などで一度は目にしたことのある作品であり、また展示
のお問い合わせが最も多い作品でもあります。しかし作品保護のため展
示日数の制限があり、なかなか実際に出会えない作品でもありますので、
是非ともこの機会にご覧下さい。

●風神雷神図屏風 俵屋宗達筆
画像は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/heijou/kaiga/kinsei/works01.html
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/heijou/kaiga/kinsei/works02.html


[土曜講座]
毎週土曜日の午後1時30分から、当館講堂において、当館研究員が展
覧会や展示品に関連した講座を行っています。
参加費は無料。定員は176名です。
テーマによっては外部講師をお招きしています。
なお、特別展覧会開催中および特別展覧会開催中以外の毎月第2・4土
曜日開催の講座に関しては、講座当日の12時45分から渡り廊下にて入
場整理券を発行します。整理券がなくなり次第、受付を終了いたします
ので、あしからずご了承願います。
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平成19年9月1日
テーマ/後宇多天皇―その人と書―
講師/企画室長 赤尾栄慶
*特集陳列「大覚寺の名宝」(8/8縲・/17)関連土曜講座
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平成19年9月8日
テーマ/明円作の五大明王像
講師/主任研究員 淺湫毅
*整理券発行/特集陳列「大覚寺の名宝」(8/8縲・/17)関連土曜講座
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平成19年9月15日
テーマ/狩野山楽による大覚寺の障壁画
講師/主任研究員 山下善也
*特集陳列「大覚寺の名宝」(8/8縲・/17)関連土曜講座
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平成19年9月22日
テーマ/京都周辺の経塚について
講師/考古室長 宮川禎一
*整理券発行
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平成19年9月29日
テーマ/近畿式銅鐸の成立とその意義
講師/情報管理室長 難波洋三
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講座詳細は→http://www.kyohaku.go.jp/jp/kouza/kouza.html
携帯版は→http://www.kyohaku.go.jp/i/doyou.html


[特別展覧会プレイベント:バロックコンサート]
狩野永徳の「国宝 檜図屏風」
この絵に音楽をつけるとしたら、
あなたはどんな曲を選びますか?
そんな問いかけに、さまざまな国の人が答えてくれました。果たして、その答えは? 
「狩野永徳」展を観る前に、ちょっと小粋な音楽遊びをしてみませんか?

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平成19年9月15日(土) 16:00開場 16:30開演
テーマ/特別展覧会「狩野永徳」プレイベント
日本テレマン協会 
京都国立博物館バロックコンサート 
EITOKUからのメッセージ 
出演者/指揮・ナビゲーション:延原武春
フォルテピアノ・チェンバロ:高田泰治
演奏:テレマン・アンサンブル 
演目/
A.ヴィヴァルディ:「四季」より「冬」 
G.Ph.テレマン:オーボエ協奏曲 ホ短調 
G.Ph.テレマン:弦楽四声部のための協奏曲 ニ長調 
J.S.バッハ:イタリア協奏曲 へ長調 BWV.971より 第一楽章 
J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV.988より アリア ほか 
A.マルチェロ:オーボエ協奏曲 ニ短調より第二楽章 
W.A.モーツァルト:きらきら星変奏曲 ハ長調 KV.265 
F.J.ハイドン:ソナタ ト長調 Hb.X?-39

入場料/全席指定(平常展観覧券付き)
S席 3500円
ペア席 5000円(2席1組で販売)
A席 2000円
●チケットのお求め方法
1. ご来館の方への窓口販売 
販売場所:京都国立博物館 南門観覧券売場(七条通側)
販売時間:開館日の閉館30分前まで。
ただし、第2、第4土曜日は無料観覧日のため販売いたしません。
2. 電話:075-531-7504(京都国立博物館 渉外課事業推進係)
(受付時間は月曜日から金曜日の10:00縲・7:00。祝日は除く)
3.WEBからの申込み
申込は→https://www7.kyohaku.go.jp/KNM/servlet/Main
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[博物館Dictionary] No.151 
あなたに語る・時代を超えて生きる心

ハートのような、葉っぱのようなかたち。錫杖(しゃくじょう)って何?

金工の部屋に、銅でできた小さな仏具を展示しています。二つの輪をつ
ないでハートのような形に作っています。あるいは葉っぱのように見え
るかも知れません。ラベルには「錫杖頭(しゃくじょうとう)」と書いて
ありますが、いったいこれは何でしょう。なんだかどこかで見たような
気がしませんか? 
近くのお寺や、町の小さなほこらにまつってあるお地蔵(じぞう)さん。
必ずというわけではありませんが、そんなお地蔵さんの中に、このよう
なものを長い棒の先につけた杖を持っているのを見ることができるはず
です。杖の名前は「錫杖」といいます。展示品は、杖の頭に取り付けた
ものなので「錫杖頭」と呼ばれているのです。展示している2個のうち
左側の錫杖頭(写真3)は、京都の壬生寺(みぶでら)で鎌倉時代からま
つられていたお地蔵さんがじっさいに持っていました。

画像は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/mmd/mmd151-3.html

お地蔵さんは、正式には「地蔵菩薩(じぞうぼさつ)」と呼ばれる仏さま
ですが、阿弥陀如来(あみだにょらい)や不動明王(ふどうみょうおう)と
ちがって、生身(なまみ)のお坊さんの姿をしていますね。そして錫杖も、
じつはお坊さんの持ち物なのです。インドのお坊さんのきまりを書いた
『十誦律(じゅうじゅりつ)』というお経には、「修行中に足をかむ毒虫
を、有声杖(ゆうせいじょう)で追い払うべし」とあります。この「有声
杖」が錫杖のことで、外輪に通した数個の小さな輪がジャラジャラと錫
(すず)(鈴)のように鳴って、毒虫だけでなく修行を妨げるさまざまな
悪いものを驚かせ退散(たいさん)させる役割をもったところから、この
ような名前がついたのです。
さて、日本でもひじょうに早い時代から、錫杖は修行するお坊さんにと
ってなくてはならない持ち物でした。現存する錫杖で最も古いのは、奈
良の正倉院や法隆寺、日光輪王寺に伝わる奈良時代のもので、まさしく
ハートを逆さまにしたような形です(写真1)。平安時代になると、右
側に展示する錫杖(写真2)のように丸みをもった逆ハート形が一般的
になり、平安時代末から鎌倉時代にかけ、壬生寺の錫杖のように外輪に
くびれをもつ形が主流となりました。

画像は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/mmd/mmd151-1.html
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/mmd/mmd151-2.html

面白いことに、奈良・平安時代の錫杖が、全国各地の山の頂上や山中の
寺跡で、かなりたくさん発見されています。中でも栃木県日光の男体山
(なんたいさん)の山頂からは34個もの錫杖が発掘で出土しましたし、富
山県立山(たてやま)など標高3000m近くの山の頂上でも見つかっている
のです。さらに注目すべきなのは、平安時代の丸みをもった錫杖の鋳型
(いがた)が、千葉・群馬など関東から九州の鹿児島まで、あちこちで出
土しており(写真4)、これらの遺跡で錫杖を鋳造していたことが明ら
かです。

画像は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/mmd/mmd151-4.html

このことは、何を意味するのでしょうか。都周辺だけでなく、それこそ
日本のいたるところ、錫杖をもったお坊さんたちが、山の中で修行をし
ていたのは間違いありません。奈良の葛城山(かつらぎさん)にいた役行
者(えんのぎょうじゃ)や、男体山にいた勝道(しょうどう)など、伝説も
含め文献で知られるお坊さんも少なくないですが、それをはるかに超え
るほどに、奈良・平安時代の山々は、修行のお坊さんたちで賑わってい
たことを錫杖が語っています。
京都でも、そのようなお坊さんの気分を少々味わうことはむずかしくあ
りません。比叡山(ひえいざん)や鞍馬山(くらまやま)、愛宕山(あたごや
ま)や醍醐山(だいごやま)など、有名なほとんどの山が修行の場だったの
ですから。ふつうの杖を錫杖がわりに山登りをすると、お坊さんたちが
お経を唱えたり、腰をおろして休んだりした場所が、必ず見つかるはず
ですよ。
(工芸室 久保智康)

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