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京都国立博物館 メールマガジン 第3号 2007年8月3日
配信日時:2022/02/14 16:50
京都国立博物館 メールマガジン 第3号[KNM:0003] 

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[ご挨拶]
8月8日からは、平常展示館の第4室を使った大規模な特集陳列「後宇
多法皇入山700年記念 大覚寺の名宝」が開催されます。41歳で出家
し大覚寺の復興に力を尽くした後宇多天皇の自筆や桃山時代の狩野山楽
の描いた襖絵など、選りすぐりの優品が展示されます。平常展の料金で、
京都・嵯峨の名刹、大覚寺伝来の質の高い作品を一堂に観賞できる良い
機会です。
ぜひご来館下さい。
(Y.N)

[特別展覧会:予告] 狩野永徳
10月16日(火)縲・1月18日(日)
特別展示館

日本美術史上、最も才能豊かに最も鮮烈に時代を駆け抜け、豪壮華麗な
大画の数々で桃山芸術を創り上げた絵師・狩野永徳。
画壇の頂点に君臨しながらも、描いた作品のほとんどが灰燼に帰した悲
運の天才は、400余年の時を越えて、今我々に何を語りかけるのか。
この秋、京都国立博物館では「狩野永徳」の史上初の大回顧展を開催し、 
桃山の怪物絵師の全貌に迫ります。

主な展示作品
・国宝 檜図屏風 東京国立博物館
・国宝 洛中洛外図屏風 米沢市上杉博物館
・重要文化財 群仙図襖 南禅寺

展覧会詳細は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tokubetsu/070710/tokubetsu.html
公式ホームページは→
http://eitoku.exh.jp/

[特集陳列:予告] 後宇多法皇入山七〇〇年記念 大覚寺の名宝
8月8日(水)縲怩X月17日(月・祝)
平常展示館8縲・0・17室

 京都・嵯峨の名刹、大覚寺は、嵯峨天皇の離宮であった嵯峨院を貞観
十八年(876)淳和天皇の皇后正子が寺に改め、恒寂法親王を開山とした
のがその始まりです。嵯峨の地は、平安時代には皇族や貴族の遊興の地
でしたが、同時代の大覚寺の動向については、残念ながら詳しいことが
わかりません。
 そのような大覚寺が復興する機縁となったのが、後宇多天皇の入山(入
寺)であります。後宇多天皇は、仏教ことに密教に深く帰依し、徳治二
年(1307)四月十四日、醍醐寺報恩院の憲淳より密教の重要な儀式であ
る伝法灌頂を受けましたが、同年七月二十四日の皇后遊義門院の崩御を
縁として二日後の二十六日、嵯峨寿量院において仁和寺真光院の禅助大
僧正(1247縲・330)を師として出家、僧名を金剛性と号して大覚寺に入
山されたのです。天皇、四十一歳のことでした。師である仁和寺の禅助
大僧正に対しては、きわめて厚い礼をもって終生の師と仰がれたのです。
このようなことにも、天皇の真摯な人柄がよく表れています。その天皇
は、密教の僧「伝法阿闍梨金剛性」として数々の聖教類や書跡を残して
いますが、元亨元年(1321)には大覚寺の金堂や僧房などの伽藍の造営、
再興に力を尽くしました。まさに大覚寺の「中興の祖」であり、現在の
大覚寺の基礎を築いた人なのです。
 本年は、その後宇多天皇が大覚寺に入山されて、ちょうど七百年とい
う節目にあたります。これを記念して開催されるのがこの特集陳列です。
今回は、後宇多天皇の自筆の書跡や聖教類、更には宸殿を飾っている桃
山時代の画家狩野山楽の襖絵、平安時代の仏師明円の唯一の作例である
五大明王像などの優品を選りすぐって展示いたします。

主な展示作品(●…国宝 ◎…重要文化財)
●後宇多天皇宸翰御手印遺告 一巻
画像は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/daimei/d3.html
●後宇多天皇宸翰弘法大師伝 一幅
画像は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/daimei/d4.html
◎後宇多天皇宸翰灌頂印明 六巻
◎後宇多天皇像 一幅
画像は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/daimei/d2.html
◎五大明王像 明円作 五躯
画像は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/daimei/d1.html
十一面観音菩薩立像 一躯
◎牡丹図 狩野山楽筆 襖十面
◎紅白梅図 狩野山楽筆 襖六面

展覧会詳細は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/daimei/daimei.html
携帯版は→http://www.kyohaku.go.jp/i/ctokutin-daikaku.html


[平常展示:予告] 国宝 風神雷神図屏風 俵屋宗達筆
9月5日(水)縲怩X月30日(日)
平常展示館11室

このたび、建仁寺より寄託されている「国宝 風神雷神図屏風 俵屋
宗達筆」が9月5日から30日まで平常展示館11室にて展示されること
になりました。
 款記も印章もそなわらないこの屏風が、俵屋宗達(生没年不詳)であ
ることを疑う人はおりません。尾形光琳も、さらにそのあとの酒井抱一
も、これを模倣した作品を制作しているのは、彼らもまた、この屏風が
宗達筆であることを微塵も疑っていなかったからです。
 ここに貼りつめられた金箔は、描かれる物象の形を際立たせ、金自体
が本然的にもっている装飾的効果として働いています。そればかりでは
なく、この屏風においては、金箔の部分は無限の奥行をもつある濃密な
空間に変質しています。つまり、この金箔は、単なる装飾であることを
超えて、無限空間のただなかに現れた鬼神を描くという表現意識を裏打
ちするものとして、明確な存在理由をもっています。傑作と呼ばれるゆ
えんがここにあります。
誰しも教科書などで一度は目にしたことのある作品であり、また展示
のお問い合わせが最も多い作品でもあります。しかし作品保護のため展
示日数の制限があり、なかなか実際に出会えない作品でもありますので、
是非ともこの機会にご覧下さい。


[土曜講座]
毎週土曜日の午後1時30分から、当館講堂において、当館研究員が展
覧会や展示品に関連した講座を行っています。
参加費は無料。定員は176名です。
テーマによっては外部講師をお招きしています。
なお、特別展覧会開催中および特別展覧会開催中以外の毎月第2・4土
曜日開催の講座に関しては、講座当日の12時45分から渡り廊下にて入
場整理券を発行します。整理券がなくなり次第、受付を終了いたします
ので、あしからずご了承願います。
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平成19年8月4日・11日・18日
夏期講座の為、休講いたします。
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平成19年8月25日
テーマ/呉彬(ごひん)の奇石図
講師/上席研究員 西上実
*整理券発行
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講座詳細は→http://www.kyohaku.go.jp/jp/kouza/kouza.html
携帯版は→http://www.kyohaku.go.jp/i/doyou.html


[京都・らくご博物館]
京都国立博物館では、多くの皆様に親しまれる博物館づくりの一環とし
て、我が国の伝統芸能である落語を「京都・らくご博物館」と題して春
夏秋冬の年4回、開催時の季節に応じた演目で上演しています。
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平成19年8月17日(金) 18:00開場 18:30開演
テーマ/京都・らくご博物館[夏]納涼寄席vol,14 
出演者/桂雀喜 桂つく枝 桂小米朝 桂米平 桂雀三郎 
演目/当日のお楽しみ!
入場料/立見席(椅子なし/平常展観覧券付)1,500円
*注:椅子席は売り切れました。
今回は、「納涼寄席」と題し、宵闇せまる夏の博物館で、暑さも忘れるほ
どおもしろい落語をお楽しみください。
●チケットのお求め方法
1. ご来館の方への窓口販売 
販売場所:京都国立博物館 南門観覧券売場(七条通側)
販売時間:開館日の閉館30分前まで。
ただし、第2、第4土曜日は無料観覧日のため販売いたしません。
2. 電話:075-531-7504(京都国立博物館 渉外課事業推進係)
 (受付時間は月曜日から金曜日の9:00縲・7:30。祝日は除く)
3.WEBからの申込み
申込は→https://www7.kyohaku.go.jp/KNM/servlet/Main
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[博物館Dictionary] No.150 
あなたに語る・時代を超えて生きる心

等伯の波濤図
竏窒アめられた意味竏箪r
画像は→
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/mmd/mmd150-1.html
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tenji/chinretsu/mmd/mmd150-2.html

とっても大きな絵ですね。でも、描かれているのは、流れる水・岩・雲・
霞だけ。実にシンプルです。
こんな風景は、皆さんもどこかで見たことがあるはず。水に親しむ季
節ですから、最近見たかも知れませんね。海かな、川かな?海に行った
ときに目撃した磯辺の景色?それとも、保津峡の川下りのときにみたス
リリングに変化していく川の景色?
すごいスピードで流れる水が、波をつくり、岩に当たって流れを変化
させる―あなたが実際に見たそんな風景の記憶と、この絵を心の中で重
ね合わせてみましょう。どうですか?波のうねりや流れの音が聞こえて
きましたか?
 では、絵そのものをじっくりと観察してみましょう。岩はどんな感じ
ですか?とても堅そうな感じがしませんか?よくみると、真っ黒な墨を
使って、素早く筆を走らせています。これでもかというくらいに力強く、
鋭く直線的な筆の線です。まるで斧で木の株をスパーンと割ったときに
できる断面のようです。岩の描き方にはいろいろあって、これは、ちょ
っと難しいけれど斧劈皴(ふへきしゅん)と呼ばれる堅い岩を描く伝統
的な方法に基づいています。でもこれほど強い描き方は、なかなかあり
ません。
 岩に対して、水の方はどうかな?墨の色は岩に比べて淡いですね。岩
の直線に対して曲線、しかもながーく筆を走らせた柔らかな線で、流れ
る波や砕ける波が描かれています。線の密度の高いところでは荒れて泡
立つ水、密度の低いところではスピーディーに流れる水、という具合に、
水の表情がゆたかに描き分けられています。その様子を、ゆっくりと味
わってみてください。
 岩は形が定まっていますが、水は形が定まらない、というより状況に
応じてどんな形にもなれます。岩vs水は、定形vs不定形、不可変vs可
変の対比なんですね。
 水は「時間の流れ」も示しています。岩はずっと変わらない、水は常
に変わり続ける。「変わらないもの」と「変わりゆくもの」。時代が移
り変わっても、変わらないものがある、という意味もこめられているよ
うです。
 水と岩とが白黒で描かれているのに対して、雲と霞は、金箔を貼って
金色で表されています。画家は、水の上にわきあがる清々(すがすが)
しい水蒸気(マイナスイオン?)や光を、金色の輝きによってしめそう
としたのだろうと思いますが、どう感じますか?それはともかく、いち
ばん派手な金色といちばん地味な白黒、そのシンプルで大胆な対比がお
しゃれですね(ただ、水には淡い青色の痕跡があります)。
 ところで、いまこの絵は掛け軸に仕立てられています。けれど、もと
もとは襖でした。それぞれの画面の端なかほどに、丸く襖の取っ手の跡
があるのが分かりますか?襖12枚が、お寺の畳敷きの部屋にはまってい
た様子を想像してみましょう。あなたは今、畳に坐って、この襖絵に向
き合っています。まるで、保津川下りの舟に乗って、すさまじいスピー
ドで渓流を下っているかのような気分になりませんか。
 こんなすてきな絵を描いた長谷川等伯は、織田信長・豊臣秀吉・徳川
家康の時代に生きた画家で、能登に生まれ、京都で活躍しました。彼が
京都に来たとき、信長・秀吉に仕えた狩野永徳が、天下人の時代にふさ
わしい力強い絵を描いて、時代をリードしていました。等伯の絵から迫
ってくる力は、永徳の絵の力強さ、スケールの大きさを、他の誰よりも
等伯が受け継いでいることを証明しています。
興味を持った人は、等伯の画集なども見てみましょう。他にもすばら
しい絵が残っています。京都国立博物館の平常展の展示予定リスト(イ
ンターネットのwebサイトなど)に注意していると、また他の絵も登場
してきます。等伯の絵に、また会いに来てくださいね。
(美術室 山下善也)


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